国王ギルガメッシュレポ その9

長かった序盤の平和も、それ以上に長く盛大だったアラブ戦争も、シド星から過ぎ去ろうとしていた。
あれほど大地を緑色に染めていたアラブは滅亡し、既に深い紺色で塗りつぶされていたが……
軍事ユニットの生産だけは、未だ繰り返されていた。


そしてシュメールは、軍事ユニットを生産するだけではとどまらなかった。
ターンが進む度に、ライフリングの研究バーが高まっていたのだった。


次の戦争まであと10ターンしかない。
「次の戦争では、必ずシュメールがこのシド星の覇権を掴みとってやる!」


〜首都エリドゥにて〜
すずな「るんららー、ららー♪ 今だけはー、敵さんいない、ついでにシフォンさんも何故か居ないー♪ さぁさぁチャンス、今こそチャンス、内政、内政、平和に内政、思うがままに内政するぞ♪ さぁさぁ働け都市市民、改善頑張れ労働者♪」


すずな「・・・・空しい・・・orz  一人で歌ってても仕方ないですね。10ターンで資金4000ゴールドをかき集めれば好きにさせてくれるそうですし、まじめにやりますか・・・各都市の執政官、集合してください」
執政官たち「「「はっ、ここに!」」」
すずな「我々はこれより研究を止め資金を集めます。各都市の執政官は、そのことを念頭に行動してください。まずウルク・・・は、シフォンさんの直轄地でしたか」
ウルク執政官「はっ。恐れながら、ライフルのみをひたすら作れ、との指示が出ていますので・・・申し訳ございません」
すずな「構いません、軍事都市はユニットを生産するためにあるのです。つづいてエリドゥ、キシュ、ラガシュ、ニプルの各都市ですが、現在の建物を建て次第、富を全力で生産すること」
エリドゥ執政官「しかし、シフォン様はトレブシェットを生産するよう指示されていたのでは?」
すずな「構いません。そもそもライフルなら都市防御を削る必要なんて無いですしね。それよりも富を生産してください」
エリドゥ執政官「はっ、余計な口出し、失礼いたしました」
すずな「いえ、これからもどんどん口出ししてくれると助かります。続いてメッカに関しては、商人を雇い専門化商業都市として発展させます。銀行を建て、しかる後グローブ座を建ててください。奴隷を使って加速してもかまいません」
メッカ執政官「芸術家ではなく、商人でよろしいのですね?」
すずな「それが指示です、商人を雇いなさい。それからナジュラーン、メディナバグダッド、クーファに関しては金融施設を優先的に作ること、研究系は後回しで構いません。また極端に人口が減るような奴隷の使い方は避けるようお願いします」
ナジュラーン執政官「・・・大学が後1ターンで完成するようですが?」
すずな「・・・それはシフォンさんの仕業ですね? ハンマーを腐らせるのも勿体無いですし、完成してから金融施設を作りなさい。 つづいてダマスカス、バスラ、バドティビラですが、引き続き文化施設を最優先でお願いします。手が空いてきたらジッグラトを建てて維持費を削減するように。もしハンマーが足りないようなら、こちらから資金援助しますから遠慮せず申し出てください」
執政官「「仰せのままに」」
すずな「こんな、ところですか・・・にしてもシフォンさん居ないと寂しいですね。どこで何をしているのか・・・」


〜最前線都市、バスラにて〜
シフォン「これより軍議をはじめる。将軍ピサロよ、これへ」
ピサロ「はっ! 参りましたでございます」
シフォン「うむ、ご苦労。 会議に入る前に、ピサロよ、この度の働き、ご苦労であった。 貴様の治療部隊のお陰で、だいぶ楽になったぞ?」
ピサロ「いえ、当然のことをしたまで。して、今回の軍議とは、いったい何を話すのでございましょう? 見たところ、すずな様もいらっしゃらぬようですが・・・」
シフォン「うむ、すずなは『内政忙しいので勝手にしてください』とか言うと思ったので知らせておらぬ。で今日の軍議だが、ライフルラッシュの件について、貴様に意見を聞こうと思ってな」
ピサロ「ライフルラッシュ・・・なるほど、バビロンに対し行うつもりでしたな。ご指示通り、アラブ戦争中に鎚鉾兵の大多数のレベルは4まで上げてあります。抜かりはありません」
シフォン「うむ。その点に関しても例を言おう。だが相手国はバビロンではなくなった。アメリカだ。バビロンでは少々、歯ごたえがなさすぎるのでな」
ピサロ「なんと・・・しかしアメリカは大国にございます。いくら技術差があるとはいえ、正面から戦うのは厳しいのでは?」
シフォン「うむ、正直厳しい。だからこそ今日貴様を呼んだのだ、戦略を相談しようと思ってな。まず、これを見てくれ」

シフォン「見て分かるとおり、アメリカ主要部の地図だ。東に見える紺色が我らの領土、西に見える茶色が座り牛の領土、北東の紫がハンムラビの領土。写ってはいないが、北に行けばスーリヤヴァルマンの領土がある」
ピサロ「はい。見たところ、アメリカの文化力は相当なものと思われますね」
シフォン「そうなのだ。つまり、アラブ戦争の時のような奇襲は通じないだろう、ということ。侵入してから都市を襲うまでに、アメリカの防衛戦力は集結してしまうだろうしな。さて、こいつをどのように切り取ろうか、それを貴様に訊きたい。案を出してみよ」
ピサロ「はっ。・・・ふむ・・・ならば、兵を二分し、アトランタおよびフィラデルフィアの両方を攻撃、合流して首都ワシントンを撃破する、というのは如何でしょう? この戦術なら、最速でアメリカの経済を破壊できます」
シフォン「うむ? ・・・うむ、しかし兵を二分するのは危険ではないか? 奪った都市のどちらを奪還するか予想が付かんし、何より、回復部隊は貴様しかおらんのだろう?」
ピサロ「ならば、片方の都市は焼けばいいのです。そうですね、今回の場合ならフィラデルフィアを焼き、戦後にその南に新たに都市を作れば良いかと存じます」
シフォン「ふむ。しかし、回復役が貴様しか居ないのは変わらんぞ? アトランタフィラデルフィア、双方の攻略部隊が合流する前に攻撃されたら、厳しいのではないのか?」
ピサロ「その点に関しましては、私めに秘策がございます。お耳をお貸しください」
シフォン「うむ? うむ・・・なるほど・・・・そうか・・・・」


〜エリドゥ〜
すずな「内政、内政〜♪ いやぁ楽しいですねぇ、最近新しい建築物の報告がばんばん届きますし、小うるさいシフォンさんも居ないしで、気楽なものです〜♪ ついでだからアップグレード資金の一部を緊急生産に回しちゃえ♪」
シフォン「ただいまーすずちゃん。なんか楽しそうだねぇ?」
すずな「あらシフォンさん。えぇ楽しかったですよ、戦争狂な誰かさんも居なかったですし」
シフォン「過去形!? そういうこと悪びれずに言うのね、すずちゃん・・・そうそう、本題。例のアップグレード資金の命令だけど、あれ取り消させてもらうわー」
すずな「ん? 取り消しですか? ひょっとしてライフルラッシュもしないとか? 今まで通りアメリカとは協調路線? あれだ、これから文化勝利狙いに切り替えるとか? もしそうなら大賛成ですよ?」
シフォン「いや それはない。んっとね。アメリカとの開戦、少し早めることにしたから。具体的には、レベル4のユニットが全てアップグレードできた時点で宣戦布告し進軍する予定。だから、10ターンとか4000円とかにこだわらず、出来るだけ早く大量の資金を集めてってことでよろ♪」
すずな「・・・はぁ!? 何ですかその独断専行!? 『よろ♪』じゃないですよ、断固抗議しますっていうかシフォンさんは自分の言ったことに責任を・・」
シフォン「ふむ、バビロニアの都市バビロンがアメリカに占領されたか、これは急がねば・・・そういえばすずちゃん、なんかトレブが全然いないみたいだけど? あと、資金がちょっと全力生産したにしては少ない気が」
すずな「・・責任を、とるのがいいと思うけど今回は良い戦略変更ですね。流石です!」
シフォン「よろしい♪ それじゃ、これでー♪」
すずな「あ、待ってくださいシフォンさん・・・って行ってしまいましたか。はぁ。仕方ないなぁシフォンさんは・・・」


〜バスラ〜
シフォン「・・・これで、またにっくきアメリカの死亡への秒読みが早まった・・・よしよし。ん? 教皇庁決議・・・ってロシアに対する経済制裁かよ。当然いいえ、で・・・って待った待った。なんでハンムラビは戦争停止決議出さないの? これじゃアメリカが勝っちゃうじゃん。はぁ、世話が焼ける・・・おーいワシントン、ちょっといい話があるんだけどー」

シフォン「これでよし、と。経済学はアメリカが半ばまで研究して放棄した技術だし、渡して問題なし・・・ぉ、ロシアへの経済制裁は、否決。当然だよね、我々の持ってる票が一番多いわけだしー♪」
ピサロ「シフォン様。お話が」
シフォン「うむ? 申してみよ」
ピサロ「はっ。例の作戦ですが、どうやら我が軍には適任者が現在いないようです。自分で提案しておいて恥ずかしい話ですが・・・」
シフォン「なんと・・・仕方ない、では戦争中に適任者が生まれることを願おう。して、軍の状況を報告してもらおうか。 どのような感じだ?」
ピサロ「はい、まず主力のアトランタ攻略軍ですが、ライフル11に鎚鉾7、カタパ1、そして不肖私。 別働隊のフィラデルフィア攻略軍は、ライフル9に鎚鉾1で構成される予定。都市を奪ったところで、鎚鉾は都市襲撃を付けてライフルにアップグレードします」
シフォン「結構。アップグレード資金が溜まり次第、アメリカに宣戦するぞ!」
ピサロ「は! 大義名分は、いかがなさいますか?」
シフォン「貴国の覇権主義には脅威を覚える、で大丈夫だろう。奴は属国1をもち、またバビロニアを壊滅させた。宣戦布告の理由としては充分だろ」
すずな「流石にアラブ戦争のときみたいに『邪魔だから死ね』とは言えませんしね?」
シフォン「うむ。・・・うむ? あれ、すずちゃんどうしてここに?」
ピサロ「はっ、すずな様だけのけ者はいけないと思い、私が報告したのですが」
シフォン「・・・はぁ。すずちゃん、止めてくれるなよ? これは、国の命運をかけた一戦なのだからなっ」
すずな「止めませんて。実を言うとシフォンさんの制覇勝利を妨害する気まんまんでしたが、やっぱりやめることにしました」
シフォン「うむ?」
すずな「いや、内政権を握って、文化勝利に導いてやろうかとも思ったのですが・・・それだと勝てない可能性があるので。仕方ないので最後までシフォンさんを補佐することにします」
シフォン「そうか、それは何よりだ。ピサロ、下がって良いぞ。やはり、私の相方はすずちゃんしかいないっ!」
すずな「はいはい。 ・・・シフォンさんのお相手、ご苦労様でしたピサロ。後は存分に戦場で働いてください。応援します」
ピサロ「ははっ!! すずな様から応援いただけるとは、名誉この上なく存じます!! それでは、すずな様、シフォン様、私はこれで!!」
シフォン「・・・・なんか・・・納得いかないなぁ・・・なんですずちゃんが先? 私の直属の部下なのに・・・」
すずな「まぁ、いいじゃないですか順番くらい。それで、アップグレード、どうなってます?」
シフォン「ん、今終わったところ。それじゃ、いきますか・・・兵よ立ち上がれ! 今こそ覇権に燃えるワシントンを、正義のライフルで打ち抜くのだ!」
すずな「アメリカへの回線、つなぎました! シフォンさん、どうぞ!!!」
シフォン「貴公の首は、柱に吊るされるのがお似合いだ!!!」