プレイヤーズコンベンション横浜2023のモダンオープンを目前に控え、握るデッキを模索していた ある日のこと、 twitter にて以下のような tweet を たまたま 見かけた。
同じ役割が2種類あればデッキになるとはよく言ったもので何もできずに負けた pic.twitter.com/PWfbmVvxSE
— サンレッド (@SUNREDkentamtg) 2023年2月23日
「奇襲隊レッド」というカテゴリ名で晴れる屋デッキ検索に掲載されていた そのリストを見たとき、「これはやれるのではないか」と直感した。
これが筆者と奇襲隊レッドの出会いである。
というわけで、今回はモダンの奇襲隊レッドというデッキについて、軽くデッキを紹介しようと思う。
このデッキを握ってモダンオープンに殴り込んだ筆者は、開幕4連勝し、流石に中盤からは失速したものの、最終成績6−4という そこそこの好成績を残すことができた。
筆者はモダンに詳しいわけでもなく、自分で気がついた範囲でも大量のミスプレイをしていたにも関わらず、このような成績を残せた以上、
もちろんマッチング運や わからん殺しなどの要素は否定できないが、デッキ自体の地力も高いのではないと考え、ここで紹介させてもらうことにした次第である。
奇襲隊レッドとは どんなデッキか?
筆者がモダンオープンに持ち込んだのは、以下のようなレシピだ。
このデッキ ――晴れる屋のカテゴリ名に倣って「奇襲隊レッド」と筆者は呼んでいる―― は、ファイレクシア:完全なる統一 発売後のモダンで成立したゲートウォッチの誓い発売後のモダンで成立し、ファイレクシア:完全なる統一で《上機嫌の解体》を得て大幅に強化されたコンボビートデッキである。
動きは至って簡単。 まず0〜1マナの軽量アーティファクトを展開し、それをコストに3体のゴブリン・トークンを生成するカード(《カルドーサの再誕》《上機嫌の解体》の2種8枚、この記事では以降「カルドーサ」と呼称する)で大量のトークンを生成する。 そして自軍のクリーチャー全体に+1/+0修正と速攻を与えるカード(《ゴブリンの奇襲隊》《無謀な奇襲隊》の2種8枚、この記事では以降「奇襲隊」と呼称する)で強化し攻撃。 残ったライフはトークンや奇襲隊がゴブリンであることを活かし《ゴブリンの手投げ弾》で相手の顔面に投げつけライフを削り切る。 そんなデッキだ。
キルターンは妨害なしの場合3〜4ターン。 トークンが横並びするという特性上、単体除去やブロッカーに対しては滅法強く、奇襲隊からの総攻撃で削りきれなかったとしてもトークンへの対処を相手に強いることができ、対処できなければ残り数点を削りきって勝てるし、ブロッカーを立てられても《稲妻》《ゴブリンの手投げ弾》といった飛び道具で仕留められる。
また、キーカードが全てコモンやアンコモンであるため、モダンのデッキとしては比較的安価であることも このデッキの魅力の1つだ。
弱点は「アーティファクト」「カルドーサ」「奇襲隊」そして それらを唱えるための「土地」を揃える必要があり、マリガン頻度が高くなりがちな点。 にも関わらずリソースの回復手段に乏しいため、緑トロンのように「妥協せずにマリガンを重ねてベストハンドでキープする」といったことが難しく、どこで妥協するかの非常に難しい判断を強いられる点。 また1/1のクリーチャーを並べるため《激情》などの割り振り火力や《紅蓮地獄》などの全体火力に弱い点、またカードの役割がはっきりしているためピーピングハンデスで大きく減速させられてしまう点などが挙げられる。
各カードの解説
《カルドーサの再誕》
キーカードその1。 アーティファクトを生け贄に捧げてゴブリン・トークンを3体出す。
アーティファクトの生け贄は追加コストであるため基本的には打ち消しに弱いが、打ち消されたとしても《彩色の星》《実験統合機》といったアーティファクトの死亡誘発を確実に誘発させられるという側面もあるため、次に紹介する《上機嫌の解体》とは相互互換である。
《上機嫌の解体》
キーカードその2。 アーティファクトを破壊してファイレクシアン・ゴブリン・トークンを3体出す。
こちらは対象を取って破壊しているため、打ち消された場合には対象のアーティファクトはそのまま残るが、一方でスタックして対象のアーティファクトを破壊された場合には立ち消えしてトークンが出ない。 《カルドーサの再誕》と《上機嫌の解体》の両方がハンドにあってどちらを唱えるかを選べる場合は、相手がアーティファクト除去を構えていそうなら《カルドーサの再誕》を、相手が打ち消しを構えていそうなら《上機嫌の解体》を、それぞれ選ぶといい。
また、このカードは対戦相手のアーティファクトを破壊することも可能である。 その場合トークンは出ないが、アミュレットタイタンの《精力の護符》といった致命的なアーティファクトをメインから対処できるのは大きな強みであるため、忘れないようにしたい。(筆者は忘れてアミュレットタイタンとのマッチアップを落としている)。
《ゴブリンの奇襲隊》
キッカーすることで全体に+1/+0修正と速攻をばらまくゴブリン。
このデッキの爆発力に関わるカードだが、実はそこまで優先度は高くない。 初手になくても後から引けば機能するカードだからだ。
キッカーしないことで1マナ1/1のクリーチャーとして運用できることは忘れないようにしたい。 1マナしか残ってない状態で《実験統合機》でめくれた場合や、2マナしか残っておらず戦場にゴブリンがいない状態で《ゴブリンの手投げ弾》と一緒にハンドにあって相手のライフが5以下の場合などで差が出る。
《無謀な奇襲隊》
怒涛コストで唱えることにより自分以外に+1/+0修正と速攻をばらまくゴブリン。 こいつ自体も速攻を持っていて、かつ基本サイズが2/1なので、怒涛コストで唱えられるならゴブリンの奇襲隊とほぼ変わらない使い勝手になる。
基本的には5枚目以降の《ゴブリンの奇襲隊》といった立ち位置のカードになる。 怒涛コストで唱えるための最初の呪文を用意するのは意外と大変で、ハンドがないときにトップすると悲しいことになる。
このカードを意識して《ミシュラのガラクタ》や《メムナイト》といったカードを手札に温存することも多いが、ガラクタで得られたはずのドローやメムナイトを場に出すことで殴れたはずのダメージを犠牲にしているのが辛い。
一応 素のサイズが2/1なので《ゴブリンの奇襲隊》の下位互換にはなっていない。 一応は。
《ミシュラのガラクタ》
モダンやレガシーで大活躍している0マナアーティファクト。 カルドーサのコストとして使うこともできるし、ドローに変換することもできる、器用なカードである。
土地の枠にフェッチランドが採用されているのも、このカードがあるためだったりする(ガラクタ、山、フェッチランドと手札に揃ってる場合、土地を置く前にガラクタを出して対象自分に起動すれば、欲しいカードなら山を置くことで欲しいカードを引けるし、欲しくないカードならフェッチを置くことでライブラリーをシャッフルして新鮮なカードを引ける)。
《メムナイト》
0マナ1/1バニラのアーティファクト・クリーチャー。 カルドーサのコストとしても殴り要員としても使えるカードである。
《無謀な奇襲隊》を怒涛コストで唱えるための種として非常に優秀だし、そうでなくても奇襲隊と組み合わせれば速攻で殴って相手のダメージ計算を狂わせられるので、手拍子に1ターン目に出す前にちょっと考える癖をつけたい。
《ヴォルダーレンの美食家》
1マナ1/1、出たときに相手に1点飛ばしつつ血・トークンを生成するクリーチャー。
カルドーサのためのアーティファクトを用意しつつ殴り要員になれる非常に優秀なカードである。 ダメージも地味ながら嬉しい。
血・トークンによるルーティングもなんだかんだで使うので、マナフラッドしているときは土地をハンドに残しておくと良い。
《彩色の星》
戦場から墓地に置かれたときに1ドローできる1マナのアーティファクト。
自身を生け贄にしたマナフィルター能力も持っているため単独でカードを引くこともできるが、基本的にはカルドーサのコストとして使いたい。
《実験統合機》
戦場に出たときと戦場から離れたときに1枚衝動ドローできる1マナのアーティファクト。
戦場に出たときの衝動ドロー、カルドーサもしくは自分の能力で生成するトークン、戦場を離れたときの衝動ドローと、うまく回れば1マナとは思えないアドを稼いでくれる。
一方で1ターン目に出して2ターン目にカルドーサで生け贄にした場合、戦場に出たときの衝動ドローは0マナカードがめくれない限りは無駄だし、生け贄にしたときの衝動ドローも土地かカルドーサ以外で1マナ以下のカードがめくれない限り無駄になる*1ため、《彩色の星》より弱く感じることも多い。
《ゴブリンの手投げ弾》
ゴブリンを生け贄にして好きな対象に5点飛ばせる1マナソーサリー。
インスタントではない点やゴブリンがいないと使えない点など、不便な点もあるが、それでも1マナ5点火力は破格。
基本的には対戦相手を対象にして最後の詰めとして使うが、放置できないクリーチャーやPWがいるならそれを対象に使えることも覚えておきたい(筆者は忘れて《イリーシア木立のドライアド》を除去しなかった結果としてアミュレットタイタン相手のマッチアップを落としている)。
《稲妻》
説明不要の1マナ3点火力インスタント。
この枠は《爆片破》を採用しているリストも多いが、1マナと軽く《無謀な奇襲隊》を怒涛コストで唱えるための種としても使える点、《爆片破》ではコストとなるアーティファクトを用意するのが意外と大変な点などから、筆者は《稲妻》を採用している(あとお気に入りのプロモカードが使えるので)。
《血染めのぬかるみ》
フェッチランド。 《血染めのぬかるみ》である理由は、たまたま筆者の家に4枚あったからである。
主に《ミシュラのガラクタ》と組み合わせて疑似占術として使う他、若干ながらデッキ圧縮にもなるため採用されている。
とはいえ必須枠ではないので、予算を抑えたいなら この枠は《山》にしてしまっても致命的ではない。
《灼陽大峡谷》《エンバレス城》《反逆のるつぼ、霜剣山》
mtg-jp.com
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特殊土地。 この辺は好みによるので、まとめて紹介する。
《灼陽大峡谷》はドローに変換できる土地ということで採用。 あと筆者はタップインする土地が嫌いなためである。
《エンバレス城》は全体強化が強力だが、テンポ的に起動機会はそこまでないし、初手に複数枚くるとタップインする可能性が出てくるため1枚のみの採用。
《反逆のるつぼ、霜剣山》はたまに最後のひと押しになってくれるので採用。 あと筆者はタップインする土地が嫌いなためである。
これらの他には《バグベアの居住地》も有力な候補であり、《ゴブリンの手投げ弾》の種として使えるゴブリンを用意できるのは強力だが、起動に実質5マナかかるのと、筆者はタップインする土地が嫌いなため、3枚目の土地が欲しいときにトップデッキするとストレスの原因になるため不採用である。
《湧き出る源、ジェガンサ》
相棒。 たまたま相棒条件を満たしているので入ってるだけで基本的には空気。
空気過ぎて手札に加えられる時でも忘れられてるケースがしばしばある。
《激情》をサイドから使う場合には相棒として使えなくなるので注意が必要(このデッキには《激情》は入ってないけど)。
《破壊放題》
複製付きの1マナアーティファクト破壊ソーサリー。
主にX=1の《虚空の杯》を割るために使われる(本体は《虚空の杯》で打ち消されるが、複製で生み出されたコピーは《虚空の杯》では打ち消されないため、X=1の《虚空の杯》に対しても有効である)。
この枠は《虚空の杯》だけを見るなら《粉々》に変えても良い。 好きな方を使おう。
《真髄の針》
指定したカードの起動型能力を封じる1マナアーティファクト。
主に指定されるのは《仕組まれた爆薬》であり、《仕組まれた爆薬》(もしくは《漸増爆弾》)が入る可能性のある全てのデッキに対してサイドインされる。
このカードの有無で勝率が劇的に変わるので、最低でも3枚は確保するべきである。
《月の大魔術師》
《血染めの月》を内蔵した3マナ2/2のクリーチャー。
特殊土地対策として投入される。 《血染めの月》でない理由は、《耐え抜くもの、母聖樹》などの置物対策で割られない利点が大きいため。 生物に対する除去は効いてしまうが、単体除去を使ってくるデッキに対しては奇襲隊レッドは基本的に相性いいはずなので問題ない。
サイドボードプラン
筆者がモダン環境に明るくないため、具体的に「このデッキにはこうサイドボーディングする」という例を示すことはできないが、大まかな指針だけ記しておく。
まず大前提として、《仕組まれた爆薬》ないし《漸増爆弾》を採用している可能性のあるデッキに対しては、必ず《真髄の針》をサイドインすること。
最悪でも1マナファクトとしてカルドーサのコストに充てられるので腐る心配は無い。
その上で、相手に劇的に刺さるカードが有るならサイドインしよう。
ただし入れ換え過ぎはご法度である。 このデッキの強みはブン回りにあるので、基本的にはサイドチェンジは最低限にしたほうが勝率は良い。
そもそも、ドロソもなく、マリガン基準も厳しいデッキなので、サイドカードを探している余裕はほぼないことは認識しておいたほうがいい。
抜くカードは、相手のデッキのゲームレンジを見て考えるのが良いと思われる。
早いデッキなら《実験統合機》は強く使えないのでサイドアウト候補になる。
消耗戦になりそうなデッキの場合は《無謀な奇襲隊》を強く使えないので枚数を減らして良い。
ただ、どちらにせよ、4枚全部抜くのは「やりすぎ」であるため、その上で《ミシュラのガラクタ》《彩色の星》《メムナイト》といったアーティファクト類の枚数を少しずつ減らすのが良いと思われる。
(筆者はこの辺あまり自信がないので、「こうサイドボーディングするのが良いよ!」という意見があればコメント頂きたいところである。)
このデッキをカスタマイズするなら
安価にしたいのであれば、土地を全て《山》にしてしまっても大きな問題はない(ただし、《エンバレス城》が入ってない場合に限り、1枚は《反逆のるつぼ、霜剣山》に変えることでデメリット無くデッキを強化できることは覚えておこう)。
土地は17枚がおそらく適正なので、枚数はいじらないほうが良いと思われる。 16枚まで削っているレシピも見かけるが推奨はできない。 種類に関しては、フェッチ4枚と山8枚までは(資金に余裕があるなら)恐らくは固定で、残りの5枚をどう割り振るかに好みが出てくる。 筆者のレシピは一例なので鵜呑みにはしないこと。
お金に余裕があるなら《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用するのも一つの手である。 宝物という形でアーティファクトを供給してくれるし、1マナ生物は《無謀な奇襲隊》の怒涛の種として優秀である。疾駆で出せば手札に戻る点も《無謀な奇襲隊》と相性がいい。
サイドボードは、筆者がモダン環境をあまり理解していないため、おそらくは練りきれていないと思われる。 好きにカスタマイズして構わない(ただし《真髄の針》は残そう)。
他のデッキを使っていて奇襲隊レッドと当たったときに意識したいこと
《ゴブリンの手投げ弾》は常にケアしよう。 除去するならゴブリンを優先すべきだし、ライフが5点以下は敗北直前という認識を持つべきである。
アーティファクト破壊はあまり効果がない。 コンボパーツの中でもアーティファクトは特に大量に入っているので、全部を除去するのは まず無理である。 一応《上機嫌の解体》に対してはスタックで対象となったアーティファクトを破壊することでトークン生成を立ち消えさせられるが、《カルドーサの再誕》に対しては無意味である。
逆に効果があるのは《激情》や軽い全体除去、ピーピングハンデスなどである。 ただしハンデスは速度を遅らせるだけなので、遅らせている間に勝ちきれるようなデッキになっている必要がある。
《仕組まれた爆薬》《漸増爆弾》はあるならサイドインしよう。 奇襲隊レッド側も対抗して《真髄の針》を入れてくるが、毎回引けるわけではない。
単体除去は意外と仕事をする。 デッキにもよるが減らしすぎないほうがいい。 カルドーサを複数枚引かれていると単体除去は無意味だが、そうでなければ効果はある。
どうしても奇襲隊レッドに勝ちたいならラクドス想起を握ろう。 奇襲隊レッドを使ってる側からすると、ラクドス想起は正直無理である。