スタンURデルバー解説

時の流れるのは速いもので、神河:輝ける世界の M:tG Arena への実装が今週末に迫ってきた。
そこで今回は、イニストラード:真夜中の狩り期およびイニストラード:真紅の契り期のスタンダードで筆者が使っていた(使っている)青赤デルバーについての記事を書こうと思う。
筆者の実力不足および調整不足により至らぬ点も多々あるとは思うが、こういうデッキもあるということを気に留めていただければ幸いである。

デッキリスト

以下が現行のデッキリストである。

Deck
1 Island (BFZ) 255
1 Mountain (BFZ) 265
4 Stormcarved Coast (VOW) 265
4 Shatterskull Smashing (ZNR) 161
4 Sea Gate Restoration (ZNR) 76
4 Jwari Disruption (ZNR) 64
4 Spikefield Hazard (ZNR) 166
4 Riverglide Pathway (ZNR) 264
4 Delver of Secrets (MID) 47
4 Spectral Adversary (MID) 77
2 Burn Down the House (MID) 131
1 Demon Bolt (KHM) 129
3 Fading Hope (MID) 51
3 Bloodthirsty Adversary (MID) 129
4 Expressive Iteration (STX) 186
3 Memory Deluge (MID) 62
2 Hall of Storm Giants (AFR) 257
3 Roil Eruption (ZNR) 155
1 Cathartic Pyre (MID) 133
2 Saw It Coming (KHM) 76
2 Heated Debate (STX) 106

Sideboard
2 Burning Hands (AFR) 135
2 Negate (ZNR) 71
1 Test of Talents (STX) 59
2 Wash Away (VOW) 87
3 Dreamshackle Geist (VOW) 58
3 Abrade (AKR) 136
2 Hullbreaker Horror (VOW) 63

https://gist.github.com/gintenlabo/7349b30998eb1351e6853994b434d87c/f9dc6bc642ac92d4e830189efec4acfbcd0663ac

f:id:gintenlabo:20220209182920p:plain


デッキコンセプト

《秘密を掘り下げる者》(以下デルバー)を速やかに変身させてビートダウンする。

これがこのデッキの狙いであり、最も多い勝ちパターンである。

このデッキのメインボードに含まれるカードでデルバーを変身させられるカードは60枚中37枚であり、これはこのデッキの実に6割強にあたる。
採用する土地をゼンディカーの夜明けのスペルランド*1にしたり、採用するクリーチャーの数を絞ることによって この比率を実現しているわけだが、
流石にこれだけスペルが多ければデルバーはほぼほぼ変身するし、めくったスペルがスペルランドの場合、そのターンに土地としてセットしてしまえば、対戦相手に情報アドを与えることもない。
デッキ全体の構成をデルバーに寄せることで、デルバーのポテンシャルを最大限に引き出し、かつデメリットを低減させているわけである。

しかし、それだけで勝てるほどスタンダードは甘くはない。

デルバーは変身前は1/1のひ弱なクリーチャーであり あらゆる除去に当たるし、変身した後であってもタフネスは2しか無いため除去されやすい。
また、そもそも60枚のデッキで4枚積みしたカードが初手7枚に含まれる確率はおよそ40%である。
デルバーが初手に来なかった場合、または初手には来たが除去されてしまった場合のゲームプランはどうしても必要になる。

そこで活躍するのが、青と赤の敵対者である。
これらは基本スペックが2マナの2点クロックと、デルバーにこそ劣るが悪くない水準のアタッカーであり、
デルバーが初手に来ない場合の序盤のゲームプランとしては十分である。

また、敵対者は、余ったマナをつぎ込むことで追加の効果を得つつサイズアップすることが可能になっている。
これらのクリーチャーと《ストーム・ジャイアントの聖堂》のおかげで、このデッキはアグロデッキでありながら消耗戦に強いのも魅力になっている。

各カード解説

それでは、デッキに採用されている各カードの解説に移ろう。

土地基盤

1 島
1 山
4 河川滑りの小道
4 嵐削りの海岸
2 ストーム・ジャイアントの聖堂

最低限の基本土地と、デッキの安定性を支える多色土地。
シャドウランドはスペルランドを大量に採用している関係上 採用できないため、この配分は必然である。
以前は二枚目の《ストーム・ジャイアントの聖堂》の枠に《プリズマリの学舎》を採用していたが、
序盤にアンタップインでき、終盤にフィニッシャーにもなる《ストーム・ジャイアントの聖堂》の方がデッキに合っているとの判断から《プリズマリの学舎》は不採用となった。

4 海門修復
4 髑髏砕きの一撃
4 ジュワー島の撹乱
4 棘平原の危険

各種スペルランド。
このデッキにおいてアンタップインできることは何よりも大事であるため、《海門修復》および《髑髏砕きの一撃》のフル投入は必然である。
残りの枠で何を採用するかだが、現状では除去やトドメとして使える《棘平原の危険》および存在自体が相手への牽制となる《ジュワー島の撹乱》をフル投入している。
他に候補に挙がるのが《ヴァラクートの覚醒》と《シルンディの幻視》であるが、
《シルンディの幻視》は終盤に必要なフィニッシャー(クリーチャーや《ストーム・ジャイアントの聖堂》)を直接探せず、
また《ヴァラクートの覚醒》は、手札で腐ったカードを有効牌に替えられる(かもしれない)ため悪くはないが、敵対者を採用している関係上 土地は不要牌になりにくいため有効に使える場面が意外と少なく、
どちらも わざわざ枠を割いて採用するほどではないという判断から、それぞれ不採用となっている。

クリーチャー

4 秘密を掘り下げる者

このデッキの顔。 除去に弱い、変身しないと打点が低い、変身するには引くカードを公開する必要があるため相手に情報アドを与える、といった弱点はあるものの、
1マナで出せる3/2飛行クリーチャーは それらの弱点を補って余りあるほど強い。 当然4枚投入だし、サイド後も まず減らさない。
対処されなければイージーウィンできるし、対処されても元手が1マナなので2対1交換とかされない限りはアドを失わないのが偉い。

3 血に飢えた敵対者
4 幽体の敵対者

このデッキの影の主役たち。《血に飢えた敵対者》はソーサリータイミングでアクションしなければいけない関係でスキを生じやすいため、ちょっとだけ減らしている。
このデッキがアグロデッキでありながらマナフラッドを許容できているのは、これらのカードの存在のおかげである。
《血に飢えた敵対者》は、クリーチャーデッキ相手には5ターン目に除去を擬似フラッシュバックしながら速攻で3点殴れるのが偉いし、
コントロールデッキ相手には6ターン目に土地を置く前に出して《表現の反復》を擬似フラッシュバックさせることでアドを得る動きが非常に強い。
《幽体の敵対者》は、4マナで自軍の他のクリーチャーをフェイズ・アウトさせて除去から守るのに使うのも強いし、
相手のアタッカーやブロッカーをフェイズ・アウトさせることでダメージレースを制する動きも強いし、
単純に瞬速持ちの飛行クリーチャーとして出すのも強い(その場合は対象不適正でカウンターが乗らないことを防ぐため誘発のフェイズ・アウトの対象は取らないこと)。

妨害

3 消えゆく希望

バウンス。 トークンを除去したり、攻撃を無理やり通したり、自軍のクリーチャーを除去から守ったり、デルバーの変身を補助したりと、できることは意外と多い。

(4 棘平原の危険)
3 乱動の噴火
1 安堵の火葬
2 白熱する議論
1 悪魔の稲妻

除去。 《乱動の噴火》は本体に飛ぶのでトドメにも使えるし、土地が結構並ぶ このデッキだとキッカーすることも多い。
《安堵の火葬》はインスタントの2マナ3点火力が必要だったため入れいているが、この枠はメタに合わせて変更できる枠である。
4点火力は、黒デッキを相手にした時に護法を貫通できる《白熱する議論》を優先しているが、予顕すれば1マナで構えられる《悪魔の稲妻》も強いため散らしている。

(4 ジュワー島の撹乱)
2 襲来の予測

カウンター。 《血に飢えた敵対者》で擬似フラッシュバックできないため枚数は抑えめ。
ここは好みによって変えていいが、筆者は予顕すれば構えやすくなる(かつハンデスにも強くなる)《襲来の予測》が好み。

2 家の焼き払い

全除去兼クロック兼チャンプブロッカー生成。
ピン除去だけでは相手の攻勢を捌ききれない場合のために採用している。 コントロールデッキ相手には3点クロックとして機能するので無駄がない。
また、飛行クロックを多用する関係上、空から殴ればあと数ターンで殴りきれるけどその前にやられそう…って場合にチャンプブロッカー生成として使う場面もかなり多い。

ドローソース

4 表現の反復

マナスクリューもマナフラッドも受けられる最強のドロソ。 青赤にする理由の7割くらいはこのカードにある。
メインは当然フル投入だが、アグロデッキ相手の場合はサイド後に枚数を減らすケースも多い。が、完全に抜くことは無い。
《血に飢えた敵対者》との組み合わせは凶悪の一言。

3 記憶の氾濫

追加のドロソ。 強力だが複数枚引きたくはないので3枚。
《表現の反復》とは違い、アグロデッキ相手の場合は全抜きするケースも多い。

サイドボード

2 否認
1 才能の試験
2 洗い落とし

追加のカウンター。 コントロールデッキ相手に入れる。
《洗い落とし》は天啓メタで入れていたが禁止改訂で消滅したので別のカウンターの方がいいかもしれない。
《否認》はコントロールデッキ以外にも幅広く入る。

2 バーニング・ハンズ
3 削剥

追加の除去。 白単緑単には全部入れる。

3 夢鎖の霊

追加の生物その1。 こちらは除去の薄いクリーチャーデッキ全般に入れる。
空から3点クロックで殴りつつ相手のクロックを減速させられるので、ダメージレースを大幅に有利にしてくれる。
また相手のブロッカーをタップすることでブロックされやすい《血に飢えた敵対者》の攻撃を通すといった芸当も可能。

2 船砕きの怪物

追加の生物その2。 こちらはコントロール相手に入れる。
軸をずらした攻めが可能になるので強い。 相手の《ストーム・ジャイアントの聖堂》を一方的に討ち取れるのも強い。

プレイガイド

キープ基準

相手がわからない場合は、青マナと赤マナが両方出せてクロックがあるなら基本キープで問題ない。

赤マナが出なくても1ターン目と2ターン目にデルバーを連続して出せるならキープしても良い。結果的に事故って負けても泣かない。

後手の場合はクロックがなくても除去があるならキープを検討して良い。

サイド後は当然マリガン基準は厳しくなる。 特に対アグロの場合は除去のないハンドをキープしてはいけない。
ただしデルバー複数枚と《夢鎖の霊》が出せるならダメージレースで勝てる公算が高いのでキープして問題ない。

対コントロールは土地の枚数が重要なので土地があるならキープして大丈夫。

プレイ指針

相手より先に殴りきれそうならダメージレースを挑み、そうでなければ消耗戦に持ち込むのが大原則。

特にメインはアドを取れるカードが多いので消耗戦を恐れないこと。

スペルランドを土地としてプレイするか呪文として使う(あるいは構える)かで悩んだら土地としてプレイするほうが良い。
このデッキは土地が伸びれば伸びるほど強いデッキである。
呪文として使ったほうが良い状況なら悩まないはず。

1ターン目にアクションがなく土地をタップインする場合は、トップが《ストーム・ジャイアントの聖堂》であった場合に備えて赤マナから置くべき。
デルバー出したいのにタップインの青マナ源しかないケースはもちろん例外で、その場合は青マナから置いていく。

相手のライフを削れる時に削っておくことは大事。 このデッキのリーサル圏は意外と広い。
一例だが、手札に《乱動の噴火》《血に飢えた敵対者》とあって7マナ出せて相手の場にブロッカーがいない場合、《乱動の噴火》を手札からキャスト→《血に飢えた敵対者》で《乱動の噴火》を疑似フラッシュバック→《血に飢えた敵対者》で殴る、という流れで9点のライフを削れる。

サイドボーディング

デッキごとに挙げるとキリがないので大まかな指針だけ書く。

アグロデッキ相手はドロソを抜いて除去を入れる。 相手の除去が薄そうなら《夢鎖の霊》も入れる。
ドロソ抜いても《血に飢えた敵対者》がいればアドは取れる。墓地追放には要注意。
《表現の反復》は《血に飢えた敵対者》で疑似フラッシュバックできるので全部は抜かないこと。

コントロールデッキ相手はカウンターを入れて除去を抜く。 ただし《乱動の噴火》と《白熱する議論》に関しては全部は抜かない方がいいケースが殆ど。
《船砕きの怪物》もサイドインする。 攻め手は多彩な方がいい。
ただし《家の焼き払い》は抜くべき。 流石にソーサリータイミングの5マナアクションは重いし、結果として得られるのが3点クロックでは割に合わない。
《夢鎖の霊》も対コントロールでは弱いのでサイドインしてはいけない。

ミラーは経験ないので分からない。 たぶんカウンター抜いて除去を増やすのがいいと思う。

全般に言えることだが、生物を増やしてスペルを抜くとデルバーの変身確率が減ることは注意するべき。
それが嫌なら《幽体の敵対者》《血に飢えた敵対者》を抜く。 デルバーはブン回りに寄与するので抜かないほうがいい。

現状の課題

マナベースが弱い。
このデッキは1ターン目にデルバーを出したいデッキである。
そのためには1ターン目にアンタップインする青マナ源が14枚必要になる*2が、現状で11枚しかない。
《河川滑りの小道》を赤で置かなければならないケースを考えると、1ターン目にデルバーを出せる確率は かなり低くなってしまっている。

神河:輝ける世界でのアップデート

《呪文貫き》は流石に入ると思う。 代わりに抜くのは《消えゆく希望》辺りが無難か。

クリーチャー構成に関しては、メインボードでは現在のデルバー+敵対者の組み合わせが強いので多分変化しない。
サイドインする生物は変わるかもしれない。

母聖樹がどれくらい使われるかは未知だが、環境に蔓延るようならスペルランドを削って基本土地を増やすべき。

*1:モードを持つ両面カードのうち、第二面が土地であるカードの総称

*2:参考: https://article.hareruyamtg.com/article/article_2756/